日本において、新型コロナウィルスの感染者数は、増加傾向にあります。同じように世界各国でも、新型コロナウイルス感染者は依然として拡大しています。
前回の記事でも紹介しましたが、政府は10月1日から、新型コロナウィルス感染症の水際対策として実施している入国制限を大幅に緩和しました。これは観光客を除き、ビジネス等で3か月以上の中長期間滞在を予定する外国人を対象に全世界からの入国を条件付きで認めるものです。
政府はこれまで159カ国・地域からの入国を原則として入国を拒否してきましたが、国費留学生、ビジネス関係者の出入国(ベトナム、タイなど16カ国)の一部については、すでに往来が再開しています。
今回の入国緩和では、さらに私費留学生や技能実習生、医療、文化芸術、スポーツなどを目的とする入国も認められるのです。来夏の東京五輪・パラリンピック開催に向けて、海外の選手らを受け入れる体制があることを、世界に示す意味もあるのでしょう。
このような入国緩和について、一部では、経済各界や他国の要請を汲みとったものとも報道されていますが、一番は経済活動の再開を重視する管内閣の姿勢が率直に反映されたような印象を筆者は持ちました。
政府の会見などを見ていると、国内の感染状況が下火となっているという認識の甘さがあるように筆者は感じてしまいます。現に私自身も、毎日の感染者数の増加に危機感を覚えることは徐々に薄れてきました。皆さんも同じような意識は少なからずあるのではないでしょうか?
しかし、日本の見解と世界の状況はまったく異なっています。全世界の感染者は3300万人、死者数は100万人を超えました。流行が衰える気配は全くありません。再感染などの事例も多数あり、ワクチンの開発も難航を極めているのです。
現に、入国を解禁した結果、感染者が再び急増した国・地域も存在します。
欧州では旅行客や経済活動の再開に踏み切りましたが、人の移動が活発になり、再拡大が顕著になりました。そのような状況下の中、ハンガリーでは今月から国境再封鎖を決定しましたが、現在も感染者は増え続けるばかりです。
国内では、これからのシーズン、新型コロナウィルス感染症とインフルエンザの同時流行が危惧されています。それに伴い、医療機関の逼迫も懸念されています。この政策が経済最優先の単なる見切り発車なのであれば、国内状況が悪化する懸念が募るばかりです。専門家には入国制限緩和は海外の流行状況を踏まえ、慎重に対応すべきだとの否定的な意見も多数存在します。感染拡大の防止策と経済再生策の境界線は、大変困難なものであるということについては理解できます。しかし、それを実行するのであれば、国民の不安を少しでも解消するよう、水際対策の徹底と合理的な説明が必要ではないでしょうか。