厚生労働省が2019年に、賃金構造基本統計調査を実施しました。この調査によると、実習生(平均27歳)の1か月の平均賃金(賞与、残業代等を除く)は156,900円でした。対して、日本人(同年代)の正社員の労働者の1か月の平均賃金(賞与、残業代等を除く)は243,900円となっています。正社員以外の雇用形態でも198,900円となっており、実習生より、やや高いという結果になりました。また、日本人(同年代)のパートタイマーなどの短時間労働者の時給についても、日本人の平均時給額は1,151円でしたが、実習生は平均977円となっていて、こちらについても報酬に差があることが判明しました。同年代の日本人の報酬と比較すると、実習生が日本人の報酬より、低い賃金で労働している実態が、政府の統計で明らかになったのです。
この調査の結果を受け、一部の団体からは、「日本人と同等の報酬を支払っていない事は、調査の結果から一目瞭然だ。政府は改善策を早急に講じるべき。」との批判の声もあがっています。 もちろん、実習生の報酬については、最低賃金法の適用はありますし「日本人と同等以上の報酬でなければならない」と法律で定められています。
しかし、実習生の個々の日本語の習得レベルや、作業の内容・習熟度にも左右されるため、必ずしも、実習生が低賃金で労働していると、一概には評価できないのではないかと筆者は感じます。
近年、日本国内で失踪する実習生が増加傾向にあり、社会問題となりつつありますが、上記のような賃金についての不満等も、要因の一つとして考えられています。これを受け、2019年12月に出入国在留管理庁より、実習生の失踪数減少を目的とし、ある施策が打ち出されました。
この施策によると、今後、実習生が失踪した場合、送出機関・監理団体・実習実施者(受入企業)で責任の所在が認められる場合には、権限で実習生の新規受入れを停止させることができるというものです。
賃金トラブル予防策
前項のような、トラブルを未然に防ぐための、予防策を下記にまとめてみました。
1、労基法を順守する。これは当然のことですが、定められているように、賃金は、通貨で、受入れ企業から実習生本人に、その全額を、毎月1回以上、一定期日に支払いを行う。
2、昇給制度等を設け、能力に応じて賃金の引き上げを行う。
3、国籍等を問わず、能力がある実習生には日本人と同等レベルの作業を行わせる。
また、2020年10月より、都道府県別に定められている地域別最低賃金については、全国40県で1円から3円引き上げられ、順次発効・公示されています。改定された県においては、発効日以後は、実習実施場所がある地域の改定された最低賃金額以上の賃金を支払う義務がありますので、注意してください。今後、順次特定最低賃金の改定も行われる可能性がありますが、各地域で適用のある業種に該当する場合は、適宜確認をしておきましょう。