今回は、外国人技能実習制度「農業」の受入れ状況と今後の課題などについて見ていきたいと思います。まず、技能実習「農業」の主な受入れ地域は、北海道、茨木県、長野県、愛知県、九州となっています。東北、北陸、近畿、沖縄などの地域は、受入れ数は少ない傾向にあります。
その中でも、茨城県は農業分野についての受入れ数が全国で一位となっています。北海道や長野県に関しては、新規の受け入れ人数は多いのですが、気候の影響もあり、冬の期間の実習作業がほとんどありません。ですので、平均で約6~9 か月程度で帰国してしまうケースも存在します。そのため、技能実習 2 号への移行は、通年を通して継続作業がある施設園芸や酪農などに限定されてしまうという現状になっています。
労務管理の課題
農業は天候等の影響を大いに受けやすいため、労働時間、休憩、休日の規定については、労基法 41 条で適用除外(除く有休、深夜労働)となっていますが、制度では労基法に準拠する形となっています。
受入れ先の農家の大多数では、適正な労務管理を行っておりますが、近年、一部の受入れ先に対して、実習生側から賃金の未払い請求等が発生しています。特に個人経営の農家では、仕事とプライベートの区別がつきにくい側面があるため、そこからトラブルに発展し、実習生が人権団体などに相談し労働争議になるケースがあるのです。このような問題が増加傾向にあるので、人権団体からは注視されています。では、どうすればこのようなトラブルを事前に防ぐことができるのでしょうか?ポイントを3つにまとめてみました。
労務管理のポイント
1、作業内容の確認
・労働条件通知書の交付を徹底する。(母国語を必ず併記)
・労働条件の内容に変更があった際には書面で交付する。
・日本の雇用慣行の説明を事前にしっかりと行う。
2、賃金の支払い
• 労働日数、労働時間数等を記録・把握を徹底する。
• 最低賃金額の改定日の確認を定期的に行う。
• 賃金支払明細を作成・通知し実習生の誤解を招かないように努める。
3、健康管理
• 雇入れ時の健康診断を実施する。(義務)
• 定期健康診断を1年に1回実施する。(義務)
• 技能実習生の日々の行動や言動をこまめにチェックし、心身の変化に注視する。
全ての対象職種に言えることですが、実習生に対しては、日本人の従業員と区別をせず、同じ態度で接することがとても大事です。そして、言葉の弊害はありますが、実習生の話しをしっかりと聴き、傾聴の姿勢を見せることで彼らのストレスも軽減されるのです。監理団体と事業所の双方で連携・協力を密にし、総合的なサポートを提供することで、このようなトラブルを事前に防ぐことができるでしょう。